ふわり ふわり 風の中


もうすぐ会える 私の大切な人


どうして泣いているの?


待っていて 今すぐあなたの元に飛んでいくから―――。




〜 Prologue 〜





あたしは庭にいた。
自分の家じゃない。けれど、どこかで見たような家の庭に、あたしはいた。
そこには、同じ顔で同じ格好をした幼い二人の女の子が、ブランコで遊んでいる。
一人は母親に、もう一人は父親にこいでもらっていて、和やかな空気が漂っている。
4人とも笑顔で、幸せな家庭そのものだった。


気が付くと、そこは教会だった。
誰かの葬儀の最中らしく、神父の悔やみの声が教会に響き渡る。
大勢の参列者の最前列に、先程の女の子達がいた。彼女達の顔立ちから、あれから数年が経っていることがわかる。
その子達は泣き腫らした顔で、親戚らしい若い女性と男性に寄り添うように座っている。
あたしは恐る恐る、祭壇近くにある2つの棺に近づいた。
開いたままの棺をのぞくとそこには、庭でブランコをこいでいた夫婦が横たわっていた――。


はっとなったあたしは、次の瞬間、別の場所へと移動していた。
そこはショッピングモールで、さっきの双子が買い物をしている。
その子達はもう立派なティーンエイジャーになっていて、両親の死からは立ち直っているかのように見えた。

二人に近づこうとした瞬間、あたしはまた別の場所にいた。学校の体育館だ。
そこでは、女子チームがバスケの試合をしている。
双子もそこにいた。しかし、ストレートヘアの一方はベンチで応援をしていて、もう一方はゆるやかなウェーブの髪をポニーテールにして、汗だくになりながらゴールを目指している。
その子が点を入れた時、ベンチの女の子も飛び上がって喜んだ。

再び、あたしは別の場所に飛ばされた。
クリスマスシーズンらしく、家で親戚夫婦とテーブルを囲んでいる双子が見える。
ストレートヘアの女の子が、一人一人に手編みのマフラーや手袋を渡していた。それは暖炉の火のように、暖かい光景だった。

しかし次の瞬間、あたしは再び教会にいた。参列者は、やけに10代が多い。
前へ進んでいくたびに嫌な気分になった。
最前列には、親戚夫婦と女の子がいた。その子はうずくまって泣いている。けれど、もう一人の女の子が見当たらない。
その時、ドクンッと心臓の音が鳴り、身体の震えが止まらなくなった。
行きたくないと心の中で悲鳴をあげるが、足は自然と棺に向かっていく。
そして――。



ジリリリリリリリリ…………!!

突然の音に、あたしは飛び起きた。気付けば、あたしはベッドにいた。
目覚まし時計のけたたましい音が鳴り響き、あたしの脳を覚ましていく。

――夢を見ていたんだ。

そう確信したあたしは、手探りでうるさい時計を止め、枕に顔を沈めた。そして、深いため息を一つ吐く。
枕には、いつから流れていたのか、まだ新しい涙の跡が残っていた。
この夢を見るのは、初めてじゃない。むしろ、月に1回は必ず見ている。
なのに、見た後の疲労感は相変わらず消えない。

立ち直ったはずなのに――。

あたしは再び天井を向き、涙を拭うように袖で顔を覆う。
そして、今見た夢を吹き消すかのように、二度目の深いため息を吐いた。



夢オチ…?(汗)
いやいや、これからこれから。
というわけで、始まりました『天使ないもうと』。
カメさん更新になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。

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